181 | するとある年の秋、水のやうにつめたいすきとほる風が、柏の枯れ葉をさらさら鳴らし、岩手山の銀の冠には、雲の影がくつきり黒くうつつてゐる日でした。 |
629 | 雪童子は、風のやうに象の形の丘にのぼりました。 |
655 | そらはすつかり白くなり、風はまるで引き裂くやう、早くも乾いたこまかな雪がやつて来ました。 |
750 | 風がそれをけむりのやうに飛ばしました。 |
1219 | 鹿どもの風にゆれる草穂のやうな気もちが、波になつて伝はつて来たのでした。 |
1292 | 向ふの一疋はそこで得意になつて、舌を出して手拭を一つべろりと甞めましたが、にはかに怖くなつたとみえて、大きく口をあけて舌をぶらさげて、まるで風のやうに飛んで帰つてきました。 |
1313 | 走りながら廻りながら踊りながら、鹿はたびたび風のやうに進んで、手拭を角でついたり足でふんだりしました。 |
1348 | 鹿はおどろいて一度に竿のやうに立ちあがり、それからはやてに吹かれた木の葉のやうに、からだを斜めにして逃げ出しました。 |
29 | 笛ふきの滝といふのは、まつ白な岩の崖のなかほどに、小さな穴があいてゐて、そこから水が笛のやうに鳴つて飛び出し、すぐ滝になつて、ごうごう谷におちてゐるのをいふのでした。 |
181 | するとある年の秋、水のやうにつめたいすきとほる風が、柏の枯れ葉をさらさら鳴らし、岩手山の銀の冠には、雲の影がくつきり黒くうつつてゐる日でした。 |
948 | お月さまは、いまちやうど、水いろの着ものと取りかへたところでしたから、そこらは浅い水の底のやう、木のかげはうすく網になつて地に落ちました。 |
1018 | お月さまの光が青くすきとほつてそこらは湖の底のやうになりました。 |
1129 | でんしんばしらは、まるで川の水のやうに、次から次とやつて来ます。 |
1333 | 右から二ばん目の鹿が、俄かにとびあがつて、それからからだを波のやうにうねらせながら、みんなの間を縫つてはせまはり、たびたび太陽の方にあたまをさげました。 |
1349 | 銀のすすきの波をわけ、かゞやく夕陽の流れをみだしてはるかにはるかに遁げて行き、そのとほつたあとのすすきは静かな湖の水脈のやうにいつまでもぎらぎら光つて居りました。 |
571 | もう東の空はあたらしく研いだ鋼のやうな白光です。 |
588 | 桃の果汁のやうな陽の光は、まづ山の雪にいつぱいに注ぎ、それからだんだん下に流れて、つひにはそこらいちめん、雪のなかに白百合の花を咲かせました。 |
644 | すると、雲もなく研きあげられたやうな群青の空から、まつ白な雪が、さぎの毛のやうに、いちめんに落ちてきました。 |
715 | そして、風と雪と、ぼさぼさの灰のやうな雲のなかで、ほんたうに日は暮れ雪は夜ぢう降つて降つて降つたのです。 |
737 | まもなく東のそらが黄ばらのやうに光り、琥珀いろにかがやき、黄金に燃えだしました。 |
766 | お日さまは赤と黄金でぶちぶちのやまなしのやう、かれくさのいいにほひがそこらを流れ、すぐうしろの山脈では、雪がこんこんと白い後光をだしてゐるのでした。 |
793 | 山男はほんとうに呑んでいいだらうかとあたりを見ますと、じぶんはいつか町の中でなく、空のやうに碧いひろい野原のまんなかに、眼のふちの赤い支那人とたつた二人、荷物を間に置いて向ひあつて立つてゐるのでした。 |
895 | 清作はすつかりどぎまぎしましたが、ちやうど夕がたでおなかが空いて、雲が団子のやうに見えてゐましたからあわてて、「えつ、今晩は。よいお晩でございます。えつ。お空はこれから銀のきな粉でまぶされます。ごめんなさい。」と言ひました。 |
1075 | 月の光は真珠のやうに、すこしおぼろになり、柏の木大王もよろこんですぐうたひました。 |
1085 | 林を出てから空を見ますと、さつきまでお月さまのあつたあたりはやつとぼんやりあかるくて、そこを黒い犬のやうな形の雲がかけて行き、林のずうつと向ふの沼森のあたりから、「赤いしやつぽのカンカラカンのカアン。」と画かきが力いつぱい叫んでゐる声がかすかにきこえました。 |
2 | わたしたちは、氷砂糖をほしいくらゐもたないでも、きれいにすきとほつた風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。 |
23 | すきとほつた風がざあつと吹くと、栗の木はばらばらと実をおとしました。 |
181 | するとある年の秋、水のやうにつめたいすきとほる風が、柏の枯れ葉をさらさら鳴らし、岩手山の銀の冠には、雲の影がくつきり黒くうつつてゐる日でした。 |
678 | そんなはげしい風や雪の声の間からすきとほるやうな泣声がちらつとまた聞えてきました。 |
1351 | それから、さうさう、苔の野原の夕陽の中で、わたくしはこのはなしをすきとほつた秋の風から聞いたのです。 |
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