インターネット版

児童文学資料研究
No.69


  発行日 1997年8月15日
  発行者 〒546 大阪市東住吉区東田辺3-13-3 大藤幹夫


目  次


1996年下半期紀要論文[補遺]大藤幹夫編
1997年上半期紀要論文大藤幹夫編
「小学生全集内容見本」について(2)上田信道
『仏教児童教化者名鑑』について藤本芳則

1996年下半期紀要論文[補遺]

大藤幹夫/編

「梅花女子大学 文学部紀要(児童文学編13)」 12.30

  • 「児童文学の手法 ―はじめての創作―「飛び出し童話」の試み」 横山充男 1-34p
  • 「「少年世界」創刊と巌谷小波」 勝尾金弥 35〜53p
  • 「多文化理解と子どもの本―パーキンズの『日本のふたご』を読む―」 三宅興子 55-75p
「近代家族形成史から見た児童文学」 目黒 強「国語年誌」(神戸大)第15号 79-92p 11.25
「メルヒェンの日本的受容について―メルヒェンは「童話」か?―」 工藤幹巳「学習院女子短期大学紀要」第34号 53-69p 12.25
「「吾輩」はなぜ「猫」であるのか」 李 国棟「国文学攷」(広島大)第150号 15-23p 6.30
「「坊ちゃん」論―閉じない円環―」 渥美秀夫「愛媛国文と教育」(愛媛大)第29号 28-42p 12.17
「宮沢賢治における「芸術」の意味」 吉江久弥「鳴尾説林」(武庫川女子大)第4号 1-10p 9.10
「「賢治の会」の生成―宮沢賢治の受容と作者の卓越化」 米村みゆき「名古屋大学国語国文学」第78号 83-96p 7.13
「「瀬戸内海コドモ連盟」について―続観光と児童文化―」 堀田 穣「京都文化短期大学紀要」第25号 21-42p 12.20

1997年上半期紀要論文

大藤幹夫/編

「ポラーノ 子どもと文化を考える」(大阪国際女子大)第8号 3.10

  • 「賢治童話「山男の四月」には何が隠されているか 未開と夢想」 松田司郎 5-15p
  • 「「雪渡り」「セロ弾きのゴーシュ」「山男の四月」など 賢治童話に描かれた幼児性」 池田昌美 16-34p
  • 「イーハトーヴの味わい方」 中野由貴 36-42p
  • 「「雛祭り」から「サザエさん」まで 子どもの替え歌」 竹内オサム・亥川朋子 44-61p
  • 「「となりのトトロ」の人と自然」 久保真奈美 62-65p
  • 「思い出との出会い・「小さな恋の物語」の世界」 綿打陽子 65-68p
  • 「手塚治虫記念館を訪ねて」 作道美樹 69-70p
  • 「宮沢賢治植物総索引表(5)ま-め」 松田司郎 87-91p
  • 「「上方発宮沢賢治生誕百年祭」ことの顛末」 報告・中川保子 97-143p
「白百合女子大学児童文化センター 研究論文集」T 3.×
  • 「『宝の島根』の読解」 片岡照子 1-41p
  • 「『宝の島根』の挿絵について」 木村八重子 42-52p
  • 「「宝の島根」(天保十二年)と尾崎テオドラの "MOMOTAROOR THE STORY OF THE SON OF PEACH"(明治三十六年)」 桑原三郎 53-63p
  • 「縮緬本の中の子ども達 A Day with Mitsu を中心に」 鈴木あゆみ 64-81p
  • 「今西祐行の歴史小説―作品に見る宗教性―」 吉沢園子 82-102p
  • 「『原語による台湾高砂族伝説集』における異類婚姻譚」 鄭 元真 103-133p
  • 「受容理論による児童文学作品の分析の試み―宮沢賢治「注文の多い料理店」考―」 水野斎木 150(17)-135(32)p
  • 「若松賎子のもう一つの顔―『ジャパン・エヴァンジェリスト』子ども欄の書き手としての若松賎子」 尾崎るみ 166(1)-151(16)p
「国際児童文学館紀要」(財団法人大阪国際児童文学館)第12号 3.31
  • 「絵雑誌「お伽絵解こども」の美育観」 村川京子 1-24p
  • 「児玉花外の児童文学」 上田信道 25-71p
  • 「尾島菊子の少女小説の文体―「綾子」を中心に―」 小松聡子 72-94p
  • 「佐々木邦の児童文学―雑誌「少女」掲載作品を中心に―」 西嵜康雄 95-118p
  • 「槙本楠郎編『現代童話集』の成立と賢治童話―「なめとこ山の熊」収録をめぐって―」 遠藤 純 119-140p
  • 「内務省図書課「昭和十三年 児童雑誌検閲簿」について」 桝居 孝 141-172p
  • 「雑誌「小国民」(のち「少国民」)細目(9)」 鳥越信(協力・道端香苗) 173-186p
  • 「方定煥と「オリニ」誌―「オリニ」誌刊行の背景―」 イサンクム(李相琴) (1)-(16)p
  • 「ノベルは新しいジャンルか」 リーッタ・クイバスマキ、訳・高橋静男 (28)-(38)p
  • 「大阪国際児童文学館における物語体験の可能性(4)―『おまけのひろせくん』の物語世界を遊ぶ―」 土居安子 (39)-(58)p
  • 「子どもと本との出会いの場に求められる条件 その(2) 大阪国際児童文学館こども室の観察を通して」 今村芳恵・永田桂子 (59)-(90)p
  • 「ムーミン童話研究参考文献目録(5)」 高橋静男 (91)-(105)p
「ワルトラワラ」(ワルトワラの会)第7号 5.10
  • 「宮沢賢治のめざしたもの/第4回・石炭袋の闇 扉のむこうへ/夢みる理由(その4)」 松田司郎 13-47p
  • 「〈四〉の異界性 イーハトーヴ・異界への旅(7)」 牛崎敏哉 48-57p
  • 「農場現場からの解読 長編詩「小岩井農場」の原風景を歩く[4]」 岡沢敏男 58-70p
  • 「連載第七回 賢治植物考 スイレン・睡蓮[LOTUS]」 藤原義孝 71-76p
  • 「第二回・彗星[ほうき星] イーハトーヴ星空案内所」 高山 勉 77-84p
  • 「イーハトーヴ甘いものめぐり イーハトーヴ料理館 第5回」 中野由貴 85-92p
「研究「子どもと文化」」(中部子どもと文化研究会)第6号 6.1
  • 「「正成の死」をめぐる考察―他の児童書との比較から、大仏作品の独自性を探る―」 相川美恵子 (1)-(27)p
  • 「児童雑誌『コボたち』(岐阜児童文学研究会編)の細目(2)」 棚橋美代子・水野和子・安藤美穂・尾子愛子 (39)-(68)p
  • 「あまんきみこ著作目録(1)」 石原志保 15-38p
  • 「『幼年倶楽部』表紙の製版と印刷」 滝口(阿部)紀子・加藤仁一郎 1-14p
[一 般]
  1. 「「リアリズム」と「ファンタジー」の分立―一九六一-六四年の『日本児童文学』を読む―」 佐藤宗子 「千葉大学教育学部研究紀要」第45巻U:人文・社会科学編 171-181p 2.28
  2. 「雑誌「おとぎの世界」の刊行」 続橋達雄 「野州国文学」(国学院大栃木短大)第59号 49-69p 3.15
[日本児童文学]
  1. 「教室空間の政治学―『一房の葡萄』・『小さな王国』を中心に―」 関 礼子 「日本文学」(日本文学協会)第46巻第1号 34-44p 1.10
  2. 「草谷桂子の児童文学「白いブラウスの秘密」を読む―生活に根をおろした文学―」 池上雄三 「静岡英和女学院短期大学 紀要」第29号 55-64p 2.1
  3. 「火野葦平の少女小説論―『七色少女』をめぐる戦後大衆児童文学の位相―」 根本正義 「東京学芸大学紀要」第二部門 人文科学第48集 357-369p 2.×
  4. 「南吉作品の表現考察―童話の表現研究方法試論―」 向川幹雄 「言語表現研究」(兵庫教育大)第13号 1-9p 3.15
  5. 「『ろくべえまってろよ』と『つり橋わたれ』について」 原 国人 「中京国文学」(中京大)第16号 13-21p 3.19
  6. 「異貌の自画像―尾崎紅葉『侠黒児』とMaria Edgeworth "The Grateful Negro"」 斉藤 愛 「比較文学」(日本比較文学会)第39巻 37-51p 3.31
  7. 「ドイツ語訳『坊っちゃん』考―Der Tor aus Tokioを読む―」 徳永光展 「比較文学」(日本比較文学会)第三十九巻 67-81p 3.31
[宮沢賢治]
  1. 「「風の又三郎」の近代」 押野武志 「文教国文学」(広島文教女子大)第35・36合併号 234-241p 2.1
  2. 「三冊の天上への旅の本について―「イーハトーヴォ物語」と『ルータベイガ物語』、『天路歴程』の比較研究―」 宮川満夫 「静岡英和女学院短期大学 紀要」第29号 251-279p 2.1
  3. 「伝記書を通して見た 戦中期の宮沢賢治」 大藤幹夫 「学大国文」(大阪教育大)第40号 17-33p 2.28
  4. 「宮沢賢治と斉藤宗次郎―賢治作品にえがかれた宗次郎像をもとめて―」 橋口隆文 「キリスト教文化研究所研究年報」(宮城学院女子大)第30号 77-92p 3.15
  5. 「宮沢賢治の宗教体験と文学」 沼田健哉 「キリスト教論集」(桃山学院大)第33号 181-202p 3.15
  6. 「小学校国語教科書における賢治童話―教材「どんぐりと山猫」を中心に―」 遠藤 純 「言語表現研究」(兵庫教育大)第13号 30-38p 3.15
  7. 「宮沢賢治作品におけるオノマトペ―『銀河鉄道の夜』を中心に―」 岩崎攝子 「盛岡大学紀要」第16号 97-118p 3.19
  8. 「評釈「東岩手火山」(宮沢賢治)」 渡辺芳紀 「紀要」(中央大学)第166号 75-106p 3.25
  9. 「賢治童話のなかの「価値観」考―「山奥」「時節がら」などを視座にして―」 千葉 貢 「立正大学国語国文」34号 19-28p 3.25
  10. 「遥かなる旅―宮沢賢治のサハリン旅行―」 萩原昌好 「埼玉大学紀要教育学部(人文・社会科学X)」第46巻第1号 49-57p 3.31
  11. 「平塚らいてうと宮沢賢治の「協同」思想」 米田佐代子 「山梨県立女子短期大学紀要」第30号 89-102p 3.31
  12. 「トシの臨終と日蓮遺文・守護経」 工藤哲夫 「叙説」(奈良女子大)第24号 73-87p 3.31
  13. 「宮沢賢治論―中央と周辺とを中心として―」 岡屋昭雄 「文学と教育」(文学と教育の会)第33集 27-35p 6.25
[世界児童文学]
  1. 「若松賎子の翻訳作品―E.P.Prentiss,J.lngelow,K.D.Wiggin の作品を中心に―」 服部裕子 「愛知女子短期大学研究紀要」第30号 67-79p 3.1
  2. 「児童文学における「内包された読者」の概念の有効性について―ルーシー・ボストンの『グリーン・ノウの子どもたち』を中心に―」 井上恵美子 「女子聖学院短期大学英文学会会誌」第29号 87-102p 3.15
  3. 「ルイス・キャロルの家庭回覧雑誌―Sylvie and Bruno の萌芽として―」 平 倫子 「北星学園大学文学部 北星論集」第34号 63-92p 3.15
  4. 「『ハックルベリー・フィンの冒険』、それはいったい誰のものなのか?―検閲と人種についての覚え書き―」 渡辺利雄 「日本女子大学英米文学研究」第32号 25-40p 3.31
  5. 「ミルンの世界―『クマのプーと哲学者たち』("Pooh and the Philosophers")(1)についての覚書」 宮添輝美 「江戸川女子短期大学紀要」第12号 49(76)-40(85)p 3.31
  6. 「ミヒャエル・エンデの『モモ』―時間の構造と語り、思想」 三宅光一 「外国語教育論集」(筑波大)第19号 213-240p 3.31
[民話・昔話]
  1. 「童子論―ヤマトタケル・スサノヲ・桃太郎―」 吉田修作 「福岡女学院大学紀要」第7号 107-128p 2.28
  2. 「昔話における夢に関する考察」 永野勇二 「九州大谷研究紀要」第23号 99-106p 3.5
  3. 「欲望の岸辺―グリム童話「漁師とその妻」を読む―」 金成陽一 「いわき明星大学人文学部研究紀要」第10号 119-131p
     3.25
[詩歌・童謡]
  1. 「唱歌の起源―目賀田種太郎関係資料と唱歌掛図復元―」 安田 寛 「山口芸術短期大学研究紀要」第29巻 1-14p 1.×
  2. 「子供の歌《童話》に於けるメディアの役割」 中村由美 「立教女学院短期大学紀要」第28号 233-263p 2.12
  3. 「"The Alphabet"の唄の系譜―英米におけるNursery Rhymesの伝統―」 夏目康子 「駒沢女子短期大学 研究紀要」第30号 79-86p 3.3
  4. [資料紹介]「明治期の倫理教育と唱歌―教育勅語関係唱歌について―」 雨宮久美 「日本大学教育制度研究所紀要」第28集 51-110p 3.25
  5. 「三木露風第二童謡集『お日さま』について」 和田典子 「兵庫女子短期大学 研究集録」第30号 63(1)-46(18)p 3.31
  6. 「金子みすゞの宇宙観」 向井尚子 「梅花日本論叢」第5号 29-40p 3.31
[絵本・漫画]
  1. 「絵本の残すもの―絵本再話過程にみる”読み”の研究」 高橋久子 「日本文学研究」(梅光女学院大)第三二号 139-146p 1.20
  2. 「絵本の自立―めくることを促すものは何か―」 佐々木宏子 「立命館文学」第548号 407-435p 1.30
  3. 「漫画におけるジェンダーについての考察―少年漫画の武闘至上主義―」 雲野加代子 「大阪明浄女子短期大学紀要」第11号 157-169p 3.10
[児童文化]
  1. 「高松お伽倶楽部と蓮井玄英(はすいげんえい)―観光と児童文化3―」 堀田 穣 「京都文化短期大学紀要」第26号 1-18p 3.15
  2. 「児童文化研究のあり方をめぐって」 川勝泰介 「幼児教育研究紀要」(名古屋経済大・市邨学園短大)第10号 35-39p

※前号(68号)記載の「『ごんぎつね』[新美南吉]研究」(平田陽子「岩大語文」)は、「1995年6月1日発行」につき削除


「小学生全集内容見本」について(2)

上田信道

 (承前)
 今日もこの種の印刷物でよく目にすることであるが、著名人・著名団体の名前や名称をあげるほか、著名人の推薦文を掲げている。それは講談社社長の野間清治と、海軍中将で子どもむけの著作も多い小笠原長生の推薦文である。このうち、出版業界の雄である野間清治の推薦文の内容の方がより面白いと思うので、ここではこちらを紹介しておきたい。

 一家をよくするも、一国をよくするも、たゞ、「子供」の生長如何である。
 近時流行の全集物中に「子供」の物のないのを私は遺憾として居つた。処が今度「小学生全集」の発表を見て、其の発行所と編輯者とに心から感謝と尊敬とを致さずには居られぬ。実は私の社に於ても、此方面の案があつたが、其の編輯に於ても、其の経営に於ても、「子供」のものは一番困難とされて居るだけに、未だ「これぞ」と云つて打つて出るまでに行つて居らなかつた。たゞ多少の調査研究の結果、之が容易ならざる大業であることを痛感して居るが故に、普通の人よりは一段強い意味を以て、貴社の此の計画を偉なりとするものである。殊に菊池寛、芥川龍之介両氏の如き文豪を編輯者に仰ぎ更に茗渓会児童読物調査委員諸氏の如き斯道の権威者が読物銓衡の衝に当られるなど、全く至れり尽せりと謂はねばならぬ。なほ、其の内容を見るに、多種多様、硬軟何れにも偏する所なく、特に我が国民性に鑑みて、武勇談、剣客伝、明治大帝、日本偉人伝の類を加へられたるが如き、或は時代精神や外国事情等を知らしめんが為に、世界の少年少女文学の傑作を取り入れられたるが如き、或は心から日本を親しみ愛せんが為に、日本建国童話、日本歴史童話を配せられたるが如き、其他宗教童や面白文庫や科学智識や、興味を思ひ、実益を考へ、人情、常識教育―現在の学校教育が、之を行はんとして未だ十分なし得ざる方面のこと迄もよく考慮されたる、而して其考慮の縦横に徹し、微細に徹する点の如き、真に敬服に堪へないものがある。私も早速、予約を申込んだ。それは小社の少年教養上最も有益有効なるものと確信したからである。
 《面白くて為になる》のキャッチフレーズで一世を風靡し、《私設文部省》の異名をとる講談社の野間らしい推薦文である。同時に、〈実は私の社に於ても、此方面の案があつた〉が〈未だ「これぞ」と云つて打つて出るまでに行つて居らなかつた〉という記述が興味深い。今から思うと、北原白秋の「日本児童文庫」とこの「小学生全集」が互いに猛烈な競争・宣伝合戦をくりひろげながら、ともに営業的に成功するのは円本時代の時流にかなったことだと言える。しかし、これらの企画が前代未聞のものであっただけに、当時の同業者の眼から見ると、かなり思い切った賭けであったということがわかるだろう。
 いずれにせよ、〈一千万組八億八千万部計画〉とまでは少し大風呂敷をひろげすぎだが、関係者の意気込みが各所に窺える。
 ところで、「小学生全集」が会員向けの予約販売であったことは、私も以前から知っていた。少し児童文学史に興味のある者にとっては常識であろう。しかし、一口に〈予約販売〉といっても、支払の方法や配本の条件など、実際にどのような形態の販売方法であったかということは分かりにくいものだ。私もこの〈内容見本〉を見て、初めて具体的かつ詳細に営業と配本の実態を知ったような次第である。といっても、当時の読者で健在の方も多いのだから、そうした方々にとっては珍しくもないことかもしれない。だが、当時の読者の記憶というものはあいまいで、回想の類にもずいぶん誤りが多い。今日ではこうした内容を正確に伝える資料に乏しいので、〈「小学生全集」御申込の栞〉と題する一文を全文紹介しておくことは、無意味ではあるまい。
小学生全集
全八十巻は、程度別に、初級用と上級用の二つに分けてあります。
 初級用(三十冊) (幼稚園より)尋常一二三学年程度。(新式四号活字組)
 上級用(五十冊) 尋常四五六学年程度。(より中学校女学校の初学年程度)
(新式五号活字組)
体裁
○菊判(教科書型) 紙数三百頁内外(四六判型五百頁の内容あり)
○表紙・口絵(原色版) 挿絵豊富(色刷多数)
○装幀。背クロース美装。製本堅牢。
 印刷精巧。校正厳密。

刊行
○本年六月より、初級用は毎月一冊発行します。
 上級生用は毎月二冊発行します。
○予約の御方だけに御わかちします。
 一冊売りはいたしません。
○配本は巻数の順序によりません。

入会
○入会申込金三十五銭(一時払の御方は申込金は不要です)
○入会申込金は最終の会費にあてますから第一回分の会費(金三十銭)は別に御払込を願ひます。(何冊分でも御随意に御払込下さい)
○毎月払の方が中途で御中止をなさる場合は申込金を御返しいたしません。

会費
○毎月払
 初級用 金三十五銭(毎月一冊)
 上級用 金七十銭(毎月二冊)
 八十冊揃 金一円五銭(毎月三冊)(特典つき)
○一時払
 初級用(三十冊) 金十円二十銭(外に送料三十冊分を要す)
 上級用(五十冊) 金十七円(外に送料五十冊分を要す)
 全部(八十冊) 金二六円六十銭(特典つき)(外に送料八十冊分を要す)

払込
○御申込は御近所の書店へ願ひます。
○書店の無き地方の方は、一時払か又は、申込金三十五と会費(何冊分でも御随意)及び送料を添へ、振替東京一八四四番興文社へ御払込下さい。(切手代用は一割増)毎月の会費は、振替貯金で其月の五日迄に御払込を願ひます。

別巻
○別巻八冊は、小学生全集全八十巻の外です。
○一時払の料金の内には含まれて居りません。
○何れも一冊三十五銭です。
○別巻御入用の方は別に御申込を願ひます。

特典
○全八十巻全部御申込の方には別巻の中、ドレデモ一冊を最後に無代進呈致します。
 以上のように、読者対象に想定する年齢が事細かに記されている。また、営業上の理由から〈毎月払〉〈一時払〉の別を設け、それぞれの区分に応じて別々の支払い条件を提示しているため、かなり複雑になっている。その中で、この営業と配本の実態を確実に検証するために、この種の〈内容見本〉は貴重だと思う。
 なお、これまで紹介してきた記事のほか、叢書の各巻ごとに内容を紹介している。カラー刷の組見本も充実したものである。しかし、紙数の関係で、ここに取りあげて論じることができなかったことをお断りしておく。

『仏教児童教化者名鑑』について

藤本芳則

 本書は32頁のパンフレットで昭和14年12月8日仏教童話聯盟から発行。編輯兼発行人は内山憲尚。「凡例」に、次のようにみえる。
◇本書は一宗一派に偏せず仏教関係の童話家、児童教化事業従事者等を出来るだけ多く収めることに努めたのであるが、予定よりも集りが少く、回答に接しない人もあるが、次回の名簿に於て加入することゝとして、不取敢集つたものを纏めた次第である。
 ここからアンケートに基づいて編集したことが推定される。記述された項目は、生年月日、住所、職業、従事、略歴、其他の6項目を基本とするが、人物により、欠ける項目もある。「従事」は児童事業に従事した年月で、「其他」は関係団体、著書等を載せた、とある。掲載人数は一八一人、幼稚園経営など幼児教育関係者や大学教員、日曜学校に関係する住職らが大半を占める。「仏教関係の童話家」とはいうものの、久留島武彦らも含まれ、厳密なものではない。
 『日本児童文学大事典』(大日本図書)索引に名前のみえる人物は、次の33名(掲載順)。

蘆谷重常  天野雉彦  青柳花明  足立 勤  阿部梧堂  伊東挙位  内山憲尚  上原弘毅  江崎小秋  岡本良雄 大関尚之  賀来琢磨  金津正格  岸 大雲  岸辺福雄  桑原自彊  久保田正文  久留島武彦  高島平三郎  高橋五山  高橋良和  砥上種樹  中野隆邦  中川静村  西村隆信  畠野圭右  原 勝  本多鉄麿  道明真治郎  三輪寿雄  都島紫香  山田巌雄  山北清次
 本誌の限られたスペースの都合もあり、掲載の人物すべてを紹介するわけにもいかないので、これらの人物について、事典の記述を補うか、相違する記述がみられる部分を次に記すことにとどめておく。ただし、相違には、誤植や記憶違い等の可能性も大きいと思われるので、それを含んでみていただきたい。
 独立項目として掲げられている人物に関しては次の通り。

【蘆谷重常】
「従事」を明治41年とする。この年「新少年」の主筆となりはじめて童話に筆をとっている。
【天野雉彦】
「従事」を明治33年4月とする。この年島根県師範を卒業している。
【足立 勤】
事典の生年月日は7月22日、名鑑では同月23日。
【伊東挙位】
事典の生年月日は5月17日、名鑑では同月6日。号に松露。大正10年9月より「従事」。
【大関尚之】
別名不知火路直行。大正11年3月仏教大学真宗科卒、昭和2年3月龍谷大学国文科卒。昭和2年9月から同4年4月まで宗教教育研究のため欧米各国に出張。
【金津正格】
「略歴」に、日本大学宗教科、日本大学幼稚園主事、日本大学児童教育教師養成部教師。【岸辺福雄】
事典の生年月日は2月4日、名鑑では同月14日。号に柳堂。「略歴」に、明治20年11月郷里但島奥佐津小学校授業生拝命、明治28年3月兵庫県師範学校卒業。
【桑原自彊】
駒沢大学日曜学園主任、駒沢大学児童教育部講師。
【久留島武彦】
「従事」は、明治36年7月とある。この年、横浜でひらいたお話の会が成功をおさめ、「久留島の出発点」とする事典の記述を裏付ける。
【高橋良和】
「職業」欄に新聞記者、「従事」は昭和2年3月。
【砥上種樹】
「略歴」に、満15歳より准訓導、それより師範二部、国語学校卒業後訓導。教諭市視学県視学、高等女学校教諭、小学校長此間30年。それより成城学園に5ケ年。なお、子と推定される砥上峰次の項目があるので参考までに記す。「職業」は、日本教育紙芝居協会主事、明治43年7月17日生れで、「略歴」は、京都府師範、東洋大学倫理教育科。
【中川静村】
別名に阿旦恭助。仏教童話の発達のため「童話作家」を編輯、「宗教劇研究会」を興して現在に至る、と「略歴」にある。
【畠野圭右】
「略歴」に、日本大学美術科中退独学、帝国工芸美術学校教授。
【道明真治郎】
事典の生年は明治15年、名鑑は明治19年。「従事」は、大正12年9月。27年間商工省東京工業試験場に於て貴金属の研究試験に従事、と「略歴」にある。
【都島紫香】
名鑑では、本名をミヤコジマと読むか。本名鈴吉。
【山田巌雄】
大正十四年宗教大学卒業。「従事」は大正10年2月。

 次に独立項目としてとりあげられていない人物について。

【賀来琢磨】
明治39年1月4日生。大分県出身。タンダバハ舞踊研究所主事。東洋大学中退、駒沢大学教育部講師、中央音楽学校教諭、中野保姆養成所講師、隅田幼稚園主事。
【岸 大雲】
大正2年12月19日生。京都仏教専門学校卒。浄土宗児童教化員。
【久保田正文】
明治29年12月25日生。日蓮宗仙寿院住職、立正大学教授。大正13年東京帝大卒、同大学院から昭和4年英国ロンドン大学終了。
【西村隆信】
明治29年3月22日生。浄土宗僧侶。宗教大学卒。