鳩ぽっぽ、鳩ぽっぽ



世の中そんなに、甘くない

 この唱歌集には、「鳩ぽっぽ」のほかにも、「お正月」や「水あそび」など、いまでも歌い続けられている唄が入っています。全二〇曲のうち、外国のメロディーをそのまま借りてきたものは一曲、毅一が作曲したのは三曲だけで、残りの一六曲はすべて廉太郎の作曲です。そのうちの一二曲はくめが作詞したものですから、全体の半数以上が廉太郎とくめのコンビによるものということになります。
 また、この唱歌集の譜面には伴奏がきちんと書かれています。それまでの唱歌集は無伴奏で主旋律だけでした。
 ところで、すこし前のことですが、子どもたちの間でこんな替え歌がはやったことがあります。

  ぽっ、ぽっ、ぽ、
  鳩ぽっぽ、
  豆がほしいか、
  やらねえぞ、
  世の中そんなに
  甘くない。

 替え歌の内容は、子どもの眼で世の中の真実をずばりついていて、恐ろしいほどです。たかが子どものナンセンスな遊びの唄だ、と笑い飛ばすことはできません。
 教育関係者にはこういう替え歌に眉をひそめる人も多いようですが、くめや廉太郎は子どもの気持ちをよく理解して、わかりやすい話しことばで唱歌を創った人たちです。子どもたちのパロディー精神を理解して、決して悪くは思わなかったでしょう。


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