山猫軒の料理メニュー 《新刊案内》



『ぺちゃんこスタンレー』

ジェフ・ブラウン文 トミー・ウンゲラー絵
さくまゆみこ訳 あすなろ書房

 ある朝、起きてみると、重い板に押しつぶされて、スタンレーのからだがぺちゃんこになっていた。なにしろ、〈身長百二十二センチ、横はば三十センチ、厚さ一・三センチ〉というのだから驚くほかない。
 だが、スタンレー自身もそういう状況を楽しんでいる。かぎのかかった部屋にでも、ドアのすきまから自由に出入りするし、お母さんが排水溝の中に落とした指輪を拾うため、すきまから入り込むというはしゃぎぶり。弟のアーサーも兄の境遇をうらやましがっている。
 また、スタンレーの両親がユニーク。おそろしくおおらかなのだ。むろん、スタンレーがぺちゃんこになった時は、驚いて医者のところに連れていった。だが、スタンレーのぺちゃんこは当分ようすをみるしかないと言われてからは、むしろぺちゃんこを積極的に利用。航空運賃を節約するため、スタンレーを封筒の中に入れて郵送したり、壁紙みたいにくるくるっと巻いて便利に持ち運んだりという具合にだ。「こまったこまった」となげいてはいるが、心の中では、ちょっとばかり、じまんに思ってもいたという。
 ただし、スタンレーがみんなから笑われたり、からかわれたりすると、お母さんは「まあ、ひどいわね。見た目がちがうから遊ばないなんて、そんなのないでしょう。姿かたちだけじゃないわ。信じてる神様がちがうとか、はだの色がちがうからといって仲間はずれにするなんて、はずかしいことよ!」と抗議。そういう常識は人一倍で、押さえるべきところはきちんと押さえているのだから、よけいに落差がめだつ。
 マンガ風のさし絵が、ナンセンスな内容をいっそう引き立てている。
 低・中学年むき A5 79P 950円

【「本とこども」1999.1掲載】