山猫軒の料理メニュー 《新刊案内》



『ねこじゃら商店へいらっしゃい』

富安陽子/作 井上洋介/絵 ポプラ社

 〈ねこじゃら商店〉におこる不思議な出来事を描く連作短編集。この店は日常の世界とは別の世界に存在している店なので、野良猫に道をきいて案内してもらう必要がある。でも、いつも連れていってくれるとは限らない。猫はきまぐれだから…。
 店主は白菊丸という名前の年とったブチねこがつとめている。見かけは小さい店でも、〈なんでもそろう、なんでも屋〉と看板にあるとおり、天狗印のかくれコートからバッタのびんづめにいたるまでの品揃えを誇る。お客は、ガマガエルのおやじとか、人間の子ども、のっぺらぼうの妖怪までさまざまである。
代金はそのとき持ち合わせているお金全部。いっぺんに買えるのはひとつだけというルールがある。それから、買った商品をこっちの世界に持ち込むと、一週間しか使えない。ほかに、〈この店で買ったものを、けっしてひとにあげてはいけない〉〈この店のことを、けっしてひとに話してはいけない〉〈わたしの名前を、だれにもいってはいけない〉ということを約束させられる。
 以上のルールを守ると何ごともおきない。けれど、それなりの礼儀を守らなかったり、代金をごまかそうとしたりすると、きまってひどいめにあう。
 白菊丸のキャラクターは、マンガの『笑うせぇるすまん』を猫にしたような感じ。正面を向いてニャゴ、ニャゴ、ニャゴわらう、ちょっと不気味な猫の絵が印象的な本づくりになっている。雑誌「おおきなポケット」に書いた短編のイメージをふくらませ、新たに書き継いでいったもの。雑誌の短編と比べて白菊丸のキャラクターにすごみがちょっぴり加わっているが、絶対に他人を傷つけないのはさすがと言うべきか。
 中学年むき A5 110P 900円
【「本とこども」1999.7掲載】