山猫軒の料理メニュー 《新刊案内》



『しまのないトラ』

斎藤 洋/作 廣川沙映子/絵 偕成社

 全部で5編からなる短編集。表紙に〈なかまとちがってもなんとかうまく生きていったどうぶつたちの話〉とある。謳い文句どおりの短編集と言ってしまえば身も蓋もないが、それぞれに味わい深いものがある。少しでも他人と違うこと、つまりマイノリティーであることがいじめや差別の対象になってしまいがちな現代の子どもたちにむけた寓話集である。
 冒頭の「つのがないバイソン」では、バイソン(アメリカ野牛)の群れに紛れ込んだ子馬が、自分は変わったバイソンだと思いこんで成長してしまう。要するに「みにくいアヒルの子」を馬に置き換えた物語であるが、自分が馬であることに目覚める過程がアンデルセンの物語とはかなりちがう。そこが値打ちだろう。ただし、どうしてわざわざ物語の設定をコロンブス以前のアメリカ大陸にしたのか意味不明。モノの本によればヨーロッパ人が渡来するまでのアメリカ大陸に馬はいないはず。したがって、野生馬も存在しなかった。
 同様のことは表題作にも言える。身体にしまがないため獲物に逃げられてしまうトラが一念発起して狩りのやり方を改める。ほかのトラが東に向かってインドに行き、しまのないトラが西に向かってライオンになったという。しかし、これでは少数ながらインドにも野生のライオンがいることはどういうことなのか? わざわざ寓話の舞台をインドの西にする必要はなかったはずである。
寓話に完璧なリアリティーを求める必要もないが、かといって特に必然性もないウソが物語の枠組みを壊してしまうのは困りもの。そういうあら探しをすれば欠点もなくはないが、子どもたちが寓話に込められた願いをくみ取ってくれれば大成功というべきか。
 中学年むき A5 142P 1000円
【「本とこども」1999.8掲載】