山猫軒の料理メニュー 《新刊案内》



『サイテーなあいつ』

花形みつる/作 垂石真子/絵 講談社

 「ったくもー、サイテー!/四年生になって最初で最大の運だめし、席決め。クジを引いたら〈ソメヤ ノリオ〉が出るもんなー。」と、こーゆー文体を気持ち悪いと思う人には入りにくいだろう。でも、やっぱ、こーでないといまどきの子どもの気持ちを書けなかったのかも。
カオルはいい子を演じている。勉強だってできるし、スポーツも万能。それに顔もかわいい。一方のソメヤは典型的ないじめられっ子である。勉強はできない、鼻が悪くて鼻水を垂らし、ところかまわずハナクソをくっつける。ヘタにさわると「バイキン」がうつるから、女の子全員から嫌われ、男の子からは無視され虐められる。
 でも、カオルは隣の席のソメヤをうまく操ることを覚えた。ソメヤは女の子から人間扱いされたことがないから、カオルがちょっとかまってくれただけで自分の仲間だと思い込む。だから、カオルがクラスの女の子から仲間はずれの対象にされても、ソメヤをうまく使えば対抗できる。バスケットボールでもドッジボールでもソメヤと組めば無敵。なぜなら、女の子はソメヤの触ったボールには絶対手を触れようとしないし、ソメヤに得意のポーズで女の子を追いかけてもらったら、みんなキャーキャー言って逃げ回るだけだからである。
 しかし、ついにカオルが「まじ切れ」してクラス中の子と大げんか。登校しなくなったことがきっかけで、カオルとソメヤは本当の仲間になる。カオルはお母さんとひさしぶりにゆっくり話し合うことができた。でも、たぶん二人はクラスから孤立したままだろうし、ソメヤの親や教師の理解も得られそうもない。だから、とりあえずの解決でしかない。
いまや、いじめは児童文学のポピュラーなテーマだが、安易な友情物語に流れず、ユニークな仕上がりである。
 中学年向き A4 192P 1400円
【「本とこども」2000.1 掲載】